4.クロッキーとデッサン、思考の習熟度

majyonohondana 魔女の思考方法論

クロッキー(croquis:フランス語)は、大体10分以内にモデルや静物などを描き、デッサン(Dessin:フランス語)はじっくり時間をかけて細かく描写するものです。

実際にデッサンなどの練習をしたことがある方なら誰もが経験があることだと思いますが、最初のうちはデッサンもクロッキーも大差ありません。と、いうのはじっくりと時間をかけてデッサンをしようと思っても10分そこそこで仕上がってしまうのです。つまり、そこからどう描きこんでいけばよいかわからないので、すぐ終点になってしまうのです。

それでも、ひたすら練習し続けると今度は1枚を仕上げるのにかなりの時間がかかるようになってきます。そしてさらに練習していくと1枚仕上げるのに数日、などという事態になります。

そして更に練習を続けると数時間で1枚仕上げられるようになります。そうなってくるとクロッキーも10分前後でそれなりの仕上がりのものを描けるようになってきます。

考えるという作業もこれと似たようなものだと思います。

最初はものを考えても、すぐに答えが出てしまいます。そして、そのできは大したものではありません。それでもそうしたことを続けていくと、今度は一つのことを考えるにもかなりの時間がかかるようになります。さらに「考える習慣」になるまで続けていくと普通の人より、同じ問題を考えたときにちょっと時間がかかる程度でより深く考えて自分なりの結論を導けるようになります。さらに日常的にこうしたことを続けていくとそれは更に磨かれて、早く、深い思考ができるようになるのです。また、そうなった時にはあたかも完成度の高いクロッキー画のように即断即決でも深いものが得られるようになるのです。

考える、つまり思考活動というものは絵を描くのに色々な点で似ています。この時間と完成度が習熟度に比例することや習熟する方法や過程などが似ているのもその一端といえるのでしょう。

ただ、ここで注意点もあります。
絵と違っていくら練習しても、本題から外れたものや、関係ないものをあたかも考えなければいけないもののように誤解していくら考えてみたところで、考えるという技術はまったく進歩しないどころか、悪い癖がついて逆に退化していってしまうという事です。自分が考える方向性が間違っていないか、その辺を意識し続けることも思考の習熟度をあげるためにとても大切なことなのです。

(初出:橘青洲ブログ 2007.8.12 改訂 2021.6.9)

タイトルとURLをコピーしました