3.静的なバランス

majyonohondana 思考の方法と行動

先に書いた「頭の中のバランス」についてもう少し続けます。このバランスは裏を返せば、私がどんな本を読んでいるか、どういう内容の仕事を始めたか、という程度しか周囲からはわかりません。なぜなら、当然のことですが、これは私が頭の中で行ったことであり、せいぜいその具体的な行動が表面化しているに過ぎず、なぜそういう行動をしているのか、までは表現されていないからです。

これは思考活動という私の頭の中の話であり、自分の中のバランスをとったということで、ある意味何も物事は変化していません。こうしたバランスを私は「静的なバランス」と呼んでいます。先にあげた例では、自分の知識についての「静的なバランス」でしたが、およそ思考というものは偏りがちになりやすく、バランスを意図的に意識しなければ、自然とバランスよくなる、ということはありません。そのバランスが人生のベクトル(向きと速さ)を決定する原因となるのです。

例えば、感情と思考のバランスを考えれば人生をどのように形作り、どのようにコントロールしていくかが見えてきます。日常生活とやりたいことのバランスを考えれば、夢見がちになりすぎることもなく、地に足のついた形で自分の夢の実現への日々に毎日を変えていくための指針が見えてきます。現状と理想とする将来のギャップ、つまり今の自分と理想の自分のバランスを考えれば、当然バランスは崩れているわけですから、自分が「今何をすべきか」を考えるきっかけが得られます。

このように、自分の内側を題材に静的なバランスをとっていくと色々なものが見えてくるのです。書店に行くと「成功法」や「夢のかなえ方」などについて色々なテクニック本や啓発本が出ています。そういう本にはそれなりに良いことが書いてありますし、そういう本自体を否定はしません。しかし、いい加減とまでは言いませんが、理屈だけ、理想論だけの本が八割方を占めているのも現実です。こういう本を何冊読んでも、大して役にはたちません。テクニックマニアになっても実際の役には立たないからです。学習法の本を大量にコレクションして、勉強しない学生と同じなのです。社会人でも自己啓発本などをありがたがって読んでいたり、さらにそれをSNSなどで語っているような人はほぼ間違いなく10年後も同じことをしているか、あるいはもっと落ちています。

また、このように大そうなことまで考えなくてもそもそも自分の中の静的なバランスが崩れていると落ち着きがなくなったり、思わぬミスをしたり、あとで後悔する原因を作ったりと色々な支障が出ます。よく問題をしょっちゅう抱えている人がいますが、それは静的なバランスを意識していないから、ということが原因になっていることがとても多いと思います。

このように自分の中の静的なバランスを考える癖がつくと、自分の家族、学校や会社など、固定したメンバーの中のバランスも同様に考えることができるようになります。余談ですが、企業経営の基礎も色々な起業の顧問をしているとこの辺にあるような気がします。適材適所などという言葉も、この静的なバランスが取れていなければ絵に描いた餅にしかならないのです。そして何よりも自分の人生の経営者は自分なのですから、よりよい人生を行きぬくためにこの静的なバランスがいかに重要かは言うまでもないでしょう。

(初出:橘青洲ブログ 2007.8.24 改訂2021.6.10)

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