第0篇 愚者 魂のあての無い漂流者よ 汝の行く先に希望は無い 海図も磁石も持たずに夜の海を彷う者よ 汝の行く先には混乱と苦悩しかない 汝の幸福はかりそめであり 汝の安らぎは来たり来る困難の序曲である 汝の目的を見据えたその目は虚ろであり 汝の自信に満ちた足取りは徒労である 汝の希望は夢であり 汝の夢は幻でしかない 夢でしかない夢を現とみなし その姿は道化にすぎない 人生をさすらう者よ 汝の名は愚者なり | |
第1篇 魔術師 深遠なる奥義は汝の前に在る しかしその道は険しい 秘儀参入を求める者よ 汝の真なる動機は唯一つであった 汝の口から零れる言葉 「私は奉仕する為に知りたいのです」 こは汝の初めに口にする呪文なり 言葉は力であり、力は言葉である 汝の夢は希望であり 汝の希望は現となる 汝の魂の航海はもはや彷徨ではない 四大のエレメンツを我物とし 汝、道を進むべし | |
第2篇 女司祭長 光のヴェールに包まれし気高き者 そのヴェールの背後にある真理を背負いし者 私は貴女の名前を知っています 月の光を具現された貴女は叡智の顕現です 貴女の御名は無数であり、ひとつです 我らを導き魂の成長を促す者 「愛は法であり、愛は力である」と教える貴女は 幾多の人生がひとつの人生であり ひとつの人生が幾多の人生となるすべを 指し示す四方の灯台です 私の魂の航海を導き 唯一の法を私が理解できるまで その光のヴェールを地に触れさせ給え | |
第3篇 女帝 感情と情動の嵐を突き抜けて調和にいたる 大地の豊穣なる実りと大いなる多産 それらが愛と肉体に結びつく時 今日までの死が 今日からの生とならん 創造的な可能性は生まれ それは最高の充足感にいたる径であり 他者に愛を与え、手を差し伸べた時 心の平和は顕現され、自らに美と愛情を受け入れる ここに在る物はどこにでも在る ここに無い物はどこにも無い 遥か遠くに旅した果ては 自分の家の門前に過ぎない 賢く、しかして、幸あれ | |
第4篇 皇帝 誰も抗えぬ支配者 汝の名は「自己の支配者」 己の行くべき道が王道と為る事を知り 力と権力とを堕落から隔絶した者よ 学問、知識、経験は即ち力であり 善悪の彼岸を知ったそれは揺るぎが無い 暁の子である汝は 暗黒の最下層で黎明の間近なるを知る 汝の行く道は我らの続く道 汝の今日の働きは我らの明日の働き 生きる事によって自ら活き 活きる事によって我らをを導く 汝を圧制者とするも、万能の教師とするも 我らの内にのみ託し 汝君臨す | |
第5篇 司祭長 永遠なる神の賢者 法のもとの神の思索者 法の頭巾と法の鏡を体現し その言葉と容は神の叡智の具現 静なる回転儀 動なる沈黙 二つの形の合一を果し 二つのコスモスの異形を異形と認めず 二つの界の狭間を自らの足場と定め 円であり球である宮に住む 道を求める者の保護者であり不可視の導師 | |
第6篇 恋人 二つの五芒星は3点のバランスを含む 二つの五芒星は一つの六芒星を形創り コスモスの大きさはミクロでありマクロである 宇宙は拡張され活性化される それ無しにここに在らず それ無しにここは在らず 古の叡智は 全ての創造原理と同じ意味を語る 根本的本源としての神と女神は 互いに敬意と喜びを捧げ合う 上になる如く下に在り 下になる如く上に在り 内包された両極性の宣言こそパンである | |
第7篇 戦車 光と力 闇と力を駆る古の戦車は 古代から現代に駆け続けた その道程は 人を無知の呪縛と 奴隷の無知から解放し 栄光の勝利へと導く その疾走は神秘の実践 その黄金の轍は 星々の天蓋の下 永劫を横切り その蹴立てられたる塵は 不決断と不安 後に残る王道は 全てを活かし 自らを活かす | |
第8篇 力 最高の友であり 最大の敵であり 自我の源であり 自我の対峙者であり 否定も肯定も許されず 内側にあり外に向くもの 透明な空気の中 獅子の口は意思の内に咆哮を許される 広大無限の獅子の力は 永劫不朽の力をもって 意識を現実に投射する | |
第9篇 隠者 奥深い森の中 自明灯を燈して闇の中を静かに行く 選ばれし者の姿 その姿を知らぬ者 眼では見るが心で見ず 耳では聞くが心で聴かず 闇はいよいよ濃くして 響くは絶望の祈り 彼の人の姿を知りし者 魔法の灯火に忠実であれ 彼の人の歩みは夜の清らかなシルフィア 宵闇の霧は晴れ アーモンドとハシバミは 約束の地へ汝を導く | |
第10篇 運命の輪 天空に浮かぶ時空の車輪 そこには全てが刻まれている 車輪はかつて廻り 後生廻り 永劫の時を廻る 与えられ奪われ 対極が対極に その回転を進めも止めもできず 疾走も失速もさせ得ず 善悪も価値も無い時空に 慈悲も無慈悲も意味を得ず 獣の領域に縛られた万物の救いは 中心というらしい | |
第11篇 公正 魂の飢えが人を彷徨に誘い 自己の内なる均衡を失した時 自転の軸は周回の彼方 失せられた均衡は 魂の眩暈を続け殊更の不均衡を導く 不均衡は崩壊を招き 業がカルマを重くさせる ネフティスの天秤は 羽根一枚の過ちも見逃せず ましてや心の重さおや |