これは2000年代くらいまでは良く聞かれましたが最近は聞かれることが激減している質問です。ただ、ネットなどを見ていると未だに10代の人を中心に魔女と黒魔術、白魔術の話題を出している人が時々いるようなので、これも一度きちんと書いておこうと思いました。最初にはっきりしておきたいことは、
魔女は黒魔術も白魔術も行わない
ということです。こういうと「えっ?白魔術もおこなわないのですか?!」と驚く人がいますが実にその通りなのです。なぜなら
魔女は魔術を白とか黒とか色分けをそもそもしない
からなのです。魔術というのは一言で言えば「現実を変える力」です。そして本来力に白も黒も、良いも悪いもないのです。私がこれを説明するときに良く使う例ですが、魔法というのは力という意味では「火と同じ」なのです。ここで質問です。
「火に良い火、悪い火はありますか?」
これはどう考えてもありません。料理のときに使う火がよい火で、放火魔の火が悪い火、という人がいるかもしれません。しかし、これは火自体が良かったり、悪かったりというのではなく、あくまで「使う人によって善し悪しが分かれる」だけで、火は火です。科学技術もそうです。例えば放射線でもレントゲンやガンの治療に使えば良いものになりますし、平気として人を殺すために使えば悪いものになってしまいます。
ここでちょっと古い話をします。
私が学生時代に習った化学の先生に広島出身の方がいました。彼は戦時中、広島大の地下にある研究室でビーム兵器の研究をさせられていました。その当時どこまで完成していたかというと、そのビーム兵器を6日間、一点に当て続けるとネズミが死んだ、というレベルのものだったそうです。気になったので私は「ネズミは動かなかったのですか?」と聞いたら「ちょっとでも動いたネズミは元気だった」とのことでした。戦時中はこんな笑い話のような研究を真剣にやっていた訳です。
さて、彼がそのような日々を送っていたある日、いきなりものすごい衝撃と共に電気が消え、その後無恩が続いたそうです。広島への原爆投下でした。それから毎日、自家発電機を節約しながら使い、時間を正確に計り、毎日規則正しく生活することで精神を保っていたそうです。毎朝起きるとみんな自分の髪の毛を引っ張ります。そして、抜けないことを確認してから「おはよう」と声をみんなにかけたそうです。髪が抜けたら、もう死ぬことが確定なのです。
そんな日々を1カ月以上続けたある日、ようやく救助が来たそうです。助け出されたときには戦争が終わっていた、という呆然とした瞬間だったそうです。その後教員となった彼は私たち学生に毎年ほぼ1コマを使って自然科学を正しく使うことの大切さを語っていました。
曰く
「どんな科学技術も使う人によって人を幸せにもするし、不幸のどん底に叩き落とすこともしてしまう。化学というのは使う人次第なのです。諸君は理科系の学生だから将来自然科学を開発し、使う人になるでしょう。その時どうか『良心』だけは忘れないでください。君たち一人一人の心が科学技術によって人類が幸せになるか、不幸になるかを決めてしまうのです」
と。魔法もこれと同じです。使う人の心次第なのです。だから、魔女は魔法を白や黒と呼ぶことがナンセンスだと思っていますし、そういう概念を用いないのです。