お香のことです。インセンスは今でこそ、雑貨屋などでもポピュラーな商品で大抵の人に通じますが、30年くらい前にはどう説明しても「仏壇のお線香でしょ、結局」以上の理解をなかなかしてもらえませんでした。もちろん線香も立派なインセンスですが、コーンタイプなど他の形のものとなると絶望的でした。そのまま火をつけるだけでよい、スティックタイプ、コーンタイプ、蚊とり線香のような渦巻き型(コイルタイプ)、チャコール(木炭)の上で焚くパウダータイプのもの等形も色々あり、種類も極めて豊富です。ちなみにOriental Wiccaで試しに数えてみたところ、常備しているものだけで400種類以上ありました。
ただ魔女がインセンスを使う目的となると、イメージではわかっていてもはっきりと理解している人が意外と少ないようです。趣味で使う場合は別ですが魔女が儀式やスペルなどでインセンスを使う目的は大きく二つです。
一つ目は「場の雰囲気を変える」ことです。つまり、日頃の生活空間を日常から切り離すことが目的になります。インセンスによって文字通り空気が変わり、それによって場が変わるとそこはサイキックな空間として日常から切り離されるのです。これはスペルや儀式を行ったり、祈りを捧げるための最低限の条件を整えた空間を生み出すことになります。
もう一つはその上での「場の清め」です。神や女神を儀式にお呼びしたり、スペルで特別な祈りをあげる時や、日々の祈りの時に「祈りを捧げるにふさわしい場」とするために「空間を清める」ことが目的になります。清められた場で祈りを捧げたりするときに魔法円を描いたりもしますが、日々の祈りの時に円をきちんと描く時間的余裕や空間的余裕がないときに、それができないから祈ることをやめるのでは本末転倒です。そうした時にインセンスはそれを焚くことで祭壇に向かうにふさわしい場を作ってくれるのです。
インセンスに点火するときに、こうした意識を持って焚き、インセンスバーナーから燻る煙を見ながら、それによって空間が日常から切り離され、場が祭壇にふさわしいものに清められていく。このイメージを強く持つことがインセンスを使うときの大切な勘どころといえます。
また、スティックインセンスや持ち運びができるタイプのインセンスバーナーを持って、部屋の中を壁に沿って歩き回ることで部屋の清めをさらにパワフルにするという使い方もあります。ただし、火の用心だけはくれぐれもお忘れなきように。