この質問の応えとしてイニシエイションを受けて魔女(便宜上「魔女」と略します)になったか、受けずに自己献身などで魔女になった(「セルフ」「セルフの魔女」と便宜上略します)かを連想したり、あげたりする人がおそらく一番多いと思います。たしかにこれは形として一番分かりやすいですし、ある意味一番目立つ違いだと思います。
しかし、それでは「イニシエイションを受けた魔女と自己献身などで魔女になった人の違いは?」き聞かれると案外応えられない人の方が多いのではないでしょうか?この質問に対する応えとしてはこの違いを考えるのが分かりやすく正しい応えになると思います。またこうした違いを考えていくことは一般にはあまり知られていなかったり、強調されることがないカヴンについての話にも成るのではないかと思っています。尚、この場合イニシエイションは話をおかしくしない為にきちんとした経験(最低でも10年以上)を持っていて、自分も伝統的なイニシエイションを受けた魔女によってなされるイニシエイションに限定します。
まづ、イニシエイションについて言えばどちらでも儀式が成功していれば魔女になれます。ここで問題なのはこの「成功すれば」ということです。つまり、イニシエイションでも、「セルフ」の儀式でも「失敗することがある」ということなのです。もちろん、カヴンで行われるイニシエイションでも失敗するときがあります。そうしたときはイニシエイションの儀式を後日改めて日を定めてやり直すことになります。いくら儀式だけ行ってもそれが失敗していたら魔女になれないからです。同様に「セルフ」の儀式でも当然失敗はあります。さらに「セルフ」の場合は当たり前のことですが経験の浅い人が一人で誰かの手助けなしに、しかもおそらくは初めてきちんと行う儀式です。なので実は失敗する確率がかなり高いのです。そしてカヴンでイニシエイションの儀式を行う場合は経験豊富な魔女が儀式が成功したか失敗したかを判断できるので、失敗してもすぐに次の対処ができます。しかし「セルフ」の場合はこれも当たり前でですが、自信を持って自分の儀式が成功したか失敗したかを判断することができません。だからといって下手な鉄砲式に何度も「セルフの儀式」を行うわけには行きません。もし、どこかで成功しているにもかかわらずさらに同じような儀式を行った場合色々な支障が出てしまうからです。つまり魔女になれたのか?なれなかったのか?がわからないままになってしまうことがほとんどなのです。これが「セルフ」にとって最初の難しい点であり、イニシエイションを受ける場合との一番の違いでしょう。もちろん、ベテランの魔女が見ればその「セルフ」の魔女の最初の儀式が成功して魔女になれているかどうかはすぐにわかります。しかしそれを指摘するのも失礼なのできちんとした魔女ならどんなに失敗しているとわかっていても、最低限対面で本人から真剣に聞かれることでもなければそのことを指摘することはないでしょう。それこそ「ジャッジしている」と文句を言われるのがオチですから。
次に多くの伝統的な魔女の場合、イニシエイションの事前学習やカヴンによってはイニシエイションを受けた後に自分たちのカヴンに伝わる「魔女の歴史」を教わることになります。ここで教えられる魔女の歴史は、歴史学的な観点から言えば間違いが多いものであることがほとんどです。しかし、それはそれで良いのです。もし正確なことが知りたければ歴史の本を図書館などで探してきて自分で調べれば良いだけのことなのですから。実はこの事で非常に大切な点はこの「魔女の歴史」がカヴンにとってはメンバーに共有される神話と同じ意味を持つところなのです。神話というものはある氏族・部族・民族の神を中心にして、大昔の事実として伝えられた説話のことです。そしてこの事が意味することはとても重要なことなのです。魔女が同じ「魔女の歴史という神話」を共有するということは、例えば同じ民族が同じ神話によってルーツが同じであることを確認しあい、認め合うことと同じだからです。自分がその歴史の末端に座ることで今までの大先輩たちや、自分を指導してくれる先輩たちと同じ流れの中に加わり、それによって密接な家族のような関係性を持っていることを保証してくれるのです。「セルフ」の場合はそれが残念ながらありません。これも「魔女」と「セルフの魔女」の大きな違いだといえます。
もう一つはグループマインドやエネルギーとのつながりです。イニシエイションを前提とした魔女の学習(Oriental Wiccaの通信講座などでも同じようなことは起こっています)を始めたころから少しづつ、そしてイニシエイションを受けて魔女のカヴンに入るとそのカヴンのグループマインドやグループのエネルギーとでも呼ぶものに繋がっていきます。これは今までの長い伝統の中で大先輩たちや、今顔をあわすことができる身近な先輩たちが今まで儀式を行い、祈り、積み上げてきたエネルギーの塊に自分が繋がっていくようなイメージをしてもらうとわかりやすいかもしれません。それによって、初心者でも儀式の際に先輩たち同様に神や女神と繋がりやすくなったり、個人で儀式を行ったり、スペルを行ったりする時にもそうしたエネルギーと繋がってより充実したものが行えたり、ディビネーション(神託占い)を行う時に制度が大きく変わったりします。「セルフの魔女」の場合、当たり前ですが一人での実践になるのでそうしたものとのつながりはありません。これも大きな違いです。
他にも色々な違いはありますが、大きな違いとしては以上のようなことがあげられます。これがイニシエイションを受けた魔女と、自己献身などで魔女になったセルフの魔女との違いだといえます。そしてこれがそのまま魔女のカヴンに入る場合と、自己献身などでソロ魔女になる場合との違いになってきます。