ブラックハンドルドナイフ(black-handled knife)

用語集

   魔女の使う黒い柄の諸刃(もろは)のナイフのことです。諸刃と両刃の区別がついていない人が時々いますが、両刃というのは右の図の左のように包丁などで両面から切削研磨した刃の付け方という意味です。基本的に一般家庭で使われる包丁は「洋包丁=両刃」「和包丁=片刃」と考えておくとあまり間違いがありません。具体的には三徳包丁、牛刀、ペティナイフ等が両刃で出刃包丁や柳刃包丁、刺身包丁等が片刃です。ちなみにブラックハンドルナイフの諸刃は右図の右側の剣の例のように二方向に刃がついているのものを指しています。

伝統的なWitchcraftでは「ブラックハンドルドナイフ」と呼ぶのが一般的です。Wiccaでは一般に「アセイミィ(athameまたはathamé)」と呼び、バックランド(Raymond Buckland)の創始したサクソン派では「アサメイ」と呼び、バックランドの青本(『Buckland’s Complete Book of Witchcraft』)などを読んで影響を受けた後進のWiccanなども「アサメイ」と呼ぶことが多いようです。日本では同じくバックランドに影響を受けていたアレクサンドリア・木星王が1970年代に「アサメイ」と紹介したのがおそらく始まりで、インターネットが本格的に普及する2000年代までは「アセイミィ」の発音がほとんど知られていなかったので日本の魔女や魔女に興味を持つ人たちの間でも「アサメイ」とよんでいる人の方が多数を占めていました。

ブラックハンドルドナイフは両刃が一般的ですが片刃のものもあります。どちらも儀式用のナイフで、両刃、片刃共にペーパーナイフのような刃で、実際にこれでものを切るという事はありません。基本的に刃の材質は鉄か鋼で、中には真鍮製や木製のものも存在します。経験上で言えば特に初心者の内はオーソドックスな鉄製の刃のもので両刃のものが使いやすいと思います。

最近はカヴンに属さない最初からソロの魔女も多いのでブラックハンドルドナイフを通販などで購入する人が多いと思いますが、イニシエイションの後にカヴンから専用のブラックハンドルナイフを他の道具と共に与えられる流派もあります。そうした流派に属していた場合、キャリアを積んだ後「2本目のブラックハンドルドナイフ」を求めたくなった場合に自分で作ったり、気に入ったナイフをブラックハンドルドナイフとして使ったりします。もちろん、その場合も柄が黒であることは大前提です。

ブラックハンドルドナイフは4大エレメンツでは「火」に対応しています。儀式魔術では剣を風に分類しますが、魔女の多くは剣はすべて「火」に分類しています。

前述のバックランドの青本をはじめ、色々な人がブラックハンドルドナイフの刃に魔女名やその他を彫り込んだり、エッチングしたりする事を勧めています。こうした作業をすることで道具にさらに愛着がわく等と言う事も否定はしませんが、本来はそうした事は一切しないのが伝統です。これはある意味当たり前の事なのですが、魔女狩りの時代に「魔女名入りのブラックハンドルナイフ」などを持っていたら一発で有罪です。なので、本来の伝統にそのような物があるはずがないのです。バックランドをはじめWiccaというもの自体が魔女狩りが終わってから生まれたものなので、こうした発想が生まれてきたのだと思います。

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